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小さな冷たい手や 冬の日の髪の匂いも
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9月は更新が一回だった。 時の速さが信じられなくて戸惑っている。どうにも同じ日ばかり過ごしていると思っていたからだ。変り栄えのない怠惰な日常。 社会に出ることへの不安。アイリスへの陶酔。そして… 明日実家に帰る。海を見に行く。 八月に入った。 そうアイリスは呟いた。それだけだった。 一切の不安や悲しみや恐怖はいつでも消し去ることは出来ない。満身創痍で進んでいくしかないのだ。いや、進んでいくという表現は正しくは無い。ただ、流されるままに時間は過ぎてゆく。いつだってそうだ。 あがいてもあがいても、何も手に入れることは出来ない。手に入れたいものなどなかったほうがよかった。何も知らなければ、覚えなければ幸せに暮らせたことは多い気がする。無知でいる方がいきやすかったりもする。 時間は沢山あるはずなのに、なぜだろう、無駄な時間をいつも過ごしてしまう。 それでいて行動できない。諦めてしまっている。 特別な才能が眠っているのにそれを見出せない。 誰もがそうであろう。 アイリスと一緒にいると言葉と時間を失う。 もっと失って行けたら。 扁桃腺が酷く腫れ、喋ることも食べることにも痛みを生じていた。高熱にうなされて、どうしようもなく惨めな気持ちだった。アイリスに熱が移っていないかそれだけが心配だった。 近頃アイリスが人間に近づいている気がする。 それは僕にとても安心感をくれるのだけれど、切なさからは遠ざかっていく気がして。 至高を目指さなくてはならない。 どんなことがあってもどんなに自分自身の感情が変わってしまっても、狭き門を目指すことを忘れてはならない。 熱にうなされて夢を見ていた。 アイリスが夢に何度も出てきて、頭を撫でてくれたんだ。それが嬉しかった。 きっと僕たちはこの世界から逃れられないのだ。 一般的に囚われ、普遍的を貶し、至高を求めるのも難しい。 でも僕は今日ほど、美しく切なく儚く思えた日はなかったのだ。 自分自身の不甲斐無さもアイリスの感覚も全て優しく僕を包み込んでくれたのだ。 |
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